就職や転職の際、その会社の福利厚生を重視して就職先を選ぶ人も多いですよね。それほど、仕事をする上で重要視されているポイントの福利厚生。少子高齢化に伴って労働人口も減少している現代では、企業側は優秀な人材を雇い入れて定着してもらう囲い込みのため福利厚生を見直す企業も多くなっています。
今回は、そんな福利厚生についての基礎的な知識と、具体的な内容について解説します。
福利厚生を知る3つのポイント
社員のエンゲージメントを高めて仕事のパフォーマンスを向上させるため、福利厚生を充実させることに力を入れている企業が多くなっている昨今。まずは、日本企業の福利厚生の仕組みについて理解しましょう。
福利厚生とは?
「福利厚生」を辞書で引いてみると、このような内容となっています。
企業が従業員とその家族の福利を充実させるために設けた制度や施設。保険・住宅・教育などに支出する賃金以外の諸給付や、社員寮・住宅、保養施設などの福利厚生施設がある。
引用元:三省堂 大辞林 第三版
つまり「福利厚生」とは、企業が働いてくれている社員やその家族の幸福・利益のために支給している給与以外の報酬や制度、サービスなどを指します。
福利厚生には「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。
法定福利厚生とは?
「法定福利厚生」とは、その名の通り法律で定められているものであり、入社すると原則として必ず加入する必要があるものです。健康保険や厚生年金などの社会保障制度が当てはまり、企業側と従業員側の双方で費用負担をしたり、企業側が全額負担をしたりするものがあります。正社員だけでなく、非正規社員も適用の対象となることがあります。
法定外福利厚生とは?
対して「法定外福利厚生」とは、法律で定められているわけではなく、企業側が独自で自由に設定することができる制度。企業側が従業員のために任意で定めるため、そのサービス内容や制度内容も柔軟に設定することができます。
最近では、ユニークな福利厚生の内容が話題になって応募者が増加した企業や、中小企業であっても福利厚生の充実度でランキング上位にランクインする企業もあり、福利厚生を見直すことで他社と差別化を図る企業も増えています。就活中や転職活動中の人は「少しでも良い条件で長期間働きたい」と考えているため、企業の福利厚生の充実度で応募先を決めるという人も多くなりました。
法定福利厚生
それでは法定福利厚生の具体的な内容を見てみましょう。
健康保険
原則として労務中以外の疾病や負傷などの医療行為に関する保険給付制度。健康保険料は被保険者(従業員)の収入に応じて保険料が決められ、費用負担は企業側と従業員側で折半となります。
介護保険
介護が必要な人が介護サービスを受ける際に費用を公的に負担する制度。40歳から加入する義務があり、費用負担は企業側と従業員側で折半となります。
雇用保険
従業員が失業した際の生活の安定を目的として支給される保険制度。1週間あたりの勤務時間などに制限があるため従業員全員が加入できるわけではありません。費用負担は、企業側が3分の2、従業員側が3分の1となります。
厚生年金保険
老齢年金、遺族年金、障害年金などの公的年金制度のうち、公務員や会社員が対象となる第2号被保険者が支払う必要のあるものが厚生年金です。費用負担は企業側と従業員側で折半となります。
労災保険
仕事中や通勤中に起きた事故などによる疾病、負傷、障害、死亡に対する保険給付をする制度。費用負担は企業側が全額負担となります。
子ども・子育て拠出金
国や地方自治体が実施している子ども・子育て支援策の財源となる子ども・子育て拠出金。厚生年金に加入する従業員が一人でもいる場合は企業側に納税義務が発生します。
法定外福利厚生
次に、企業独自で設置している主な法定外福利厚生についてご紹介します。法定外福利厚生の内容は企業によってさまざまなので、実施していない企業もあるという点にだけご注意ください。
交通費(通勤費)
自宅から会社までの通勤のために電車やバス、自家用車などを使った場合の交通費が一部または全額支給されることがあります。通勤のための交通費は毎日かかるものですし、自宅が遠方になればなるほど交通費の負担も大きくなるので、社員にとっては嬉しいですね。
住宅手当、家賃補助
賃貸住宅に住んでいる場合の家賃や、持ち家のローン返済の一部を会社が負担してくれます。企業によって「家賃の○%」「上限○万円」と金額や負担割合が異なるため、事前に確認が必要ですね。
社宅や寮の提供
住宅手当だけでなく、社宅や社員寮なども福利厚生に含まれます。一般的に、不動産会社経由の賃貸物件に住むよりも安く住むことができるのが魅力です。
健康のための福利厚生
企業によってサービスの幅も違いますが、人間ドックの実施、健康診断の費用負担、カウンセリングなどがあります。スポーツジムの利用補助券やスポーツイベントの実施などをしている企業も多く、社員には健康的に長く働いてほしいと考えている企業が多いことが分かります。
社員食堂の設置、ランチ補助
社員の昼食代を節約したり、栄養バランスを考えたメニューで社員の健康維持をしたりすることを目的として、社員食堂を設置している企業も多いです。社食の設置は運用面でのハードルが高いと考えている企業では、デリバリーサービスを導入したり、ランチ代の費用負担をしたりしているケースもあります。
家族手当
「扶養手当」とも呼ばれ、従業員の扶養家族に対して手当が支給されます。子育て世代の会社員には嬉しい制度ですね。
保養施設
以前は会社が保養所を所有していることが多かったですが、維持費や運営費がかかるために、近年はホテルや旅館を保養施設として利用できる企業も増えてきました。ワークライフバランスが重要視されている現代では、従業員が休暇中に保養施設を利用することでプライベートを充実させることによって仕事のパフォーマンス向上が期待できます。
育児支援関連
働く女性が増加したことにより、育児関連の福利厚生の充実も求められています。法規定の育児休業期間への上乗せ、育児施設の利用料金補助、ベビーシッターの利用料金補助、育児短時間勤務などがあります。また、最近では社員の子どもを預けることができる企業内託児所(事業所内保育所)を設置している企業も増加しています。
慶弔見舞金
結婚祝い、出産祝い、疾病や災害の見舞金、香典などの慶弔金も福利厚生に含まれます。働いている会社が一緒になって喜んでくれたり悲しんでくれたりしていると感じたら、会社に対しての「ありがたい」という気持ちが強くなりますね。
特別休暇制度
有給取得率が依然として低い日本では、福利厚生としてさまざまな特別休暇制度を取り入れて社員が休暇を取りやすくする企業が増えています。冠婚葬祭に関する慶弔休暇、勤続年数に応じた長さの休暇を取れるリフレッシュ休暇、自分や家族の誕生日や記念日に休暇を取れる記念日休暇(アニバーサリー休暇)などがあります。
近年、導入する企業が増えているのが女性ならではの生理休暇。更に、サイバーエージェントが導入している妊活休暇も注目を浴びています。
まとめ
企業側は法定外福利厚生を見直すことで、採用のしやすさや従業員の定着率の向上が期待できます。また、従業員側は福利厚生が充実していることで仕事のモチベーションがアップします。福利厚生の充実は企業側にとっても従業員側にとってもメリットのあることなので、自社の福利厚生を確認してみてくださいね。