「コパイロツトは、プロジェクトマネジメントのプロフェッショナル集団。社内に制作機能を持たず、プロジェクト単位で外部制作者とタッグを組み、クライアントの「copilot(=副操縦士)」となって課題解決をトータルにサポートしています。デジタルマーケティングサポート、組織・チームづくり、業務改善まで広く携わる同社の強みは、社員一人ひとりのライフスタイルを尊重し、多様な働き方で成果を上げられるチーム共創型の組織づくりにあります。果たして、自由で透明度の高い働き方は、どのようにして形作られていったのでしょうか。共同創業者の定金基さんに、組織作りの思いや価値観の根底にある原体験、チームのパフォーマンスを最大化させるための方法論などをうかがいました。

 

時代とともに働き方が変わっていった

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ーー社員のライフスタイルに合わせた自由な働き方を推進しているコパイロツト。会社を立ち上げた当初から続けられてきたのでしょうか?

「会社を立ち上げたのは2005年だったのですが、当初はめちゃくちゃな働き方でしたね。家に帰るのは水曜日と日曜日で、それも風呂に入るためだけ。ずっと椅子に座り続けていたせいで、ジーパンの太ももの裏側が破れたこともあります。今振り返ってみると寝る間も惜しんで働いていましたね」

ーーまるで想像がつきませんね。

「7年前に子どもが生まれ、それが変化のきっかけになったと思います。やっぱり子供には抗えない。はじめて対面した瞬間、『愛でる以外の方法が見つからない』と思いました(笑)。そうやって今まで仕事に充てていた時間の一部を子育てに充てるようになってから、意外と週末に仕事をしなくてもいけるもんだなと気づいたんです。

あとはメンバーも無理がきかない年齢になってきて、このままの戦い方では勝負できないなと感じはじめていたのもあります。そのあたりからプロジェクトマネジメント事業にシフトし、チーム化を推し進めてナレッジをストックしていこうという話になりました」

ーー現在、メンバーのみなさんはどういった働き方をしているんですか?

「メンバーが長期的に活躍できるよう柔軟にサポートしています。育休、産休は希望すれば誰でも取れますし、むしろ新たな制度を提案することも歓迎しています。長く在籍している女性メンバーのひとりは、採用面談のときに『これから子どもを持ちたいと思っている』と聞いたうえで採用しました。今も2回目の産休中です。週の半分、新潟からリモートワークで働いている男性メンバーもいます。

上げたい成果によって、働き方はさまざまだと思っています。コパイロツトの場合はプロジェクトベースの仕事が多いこともあり、一人ひとりの特性や興味、ライフプランと照らし合わせながら働き方や参加するプロジェクトを検討するようにしています。」

 

一様の価値観が嫌いだった子供時代

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ーー定金さんのベースにあるのはどのような考えなのでしょうか?

「こうあってしかるべきという、一様な価値観が好きじゃないんです。学生時代になんでみんな同じ曲を夢中になってハマるのかわからなかった。友人からは斜に構えているとか、はすからものを見ているとよく言われていました。

あとは誰もやっていないことをやろうという思考が、当時からあったんだと思います。子供ながらに自分には東大や京大に進学できるような適正はないと思っていたので、正攻法ではそういう人たちに到底敵わない。それでも自分にできることはなんだろうと自問自答していました。大学でバイオテクノロジーを学び地元の食品会社でファクトリーエンジニアをやろうと思ったのも、誰もやってなさそうだし、僕でもやっていけそうだったから。ただそれだけの理由なんです」

ーー定金さんは社会にいいことをして事業を行いたいとおっしゃっています。周囲と一定の距離を置いていた少年時代から、社会性の高い仕事に目を向けるようになったのは、どんな理由からだったんでしょうか?

「今思えば、予備校時代の友人が放ったひと言に突き動かされたんだと思います。ある時、彼のおじいさんがガンで亡くなって、自分は医者になってガンを治したいと宣言したんですよ。その言葉を聞いて、羨ましいなと思ったんです。後に彼は獣医になるんですけど(笑)、ひとつの軸をもって進んでいけることに憧れを覚えました。

博報堂が刊行している雑誌『広告』で目にした『パパがもし正義のサラリーマンだったら』というコラム記事からも影響を受けました。当時の編集長の池田正昭さんが執筆されたもので、初めて読んだのは2001年のことでした。朝会社へ向かうお父さんに息子が、『パパって仕事なにやってるの?』『社会の役に立ってるの?』といった素朴な質問を投げかけるという内容なんですが、仕事をしていくうえでそれに答えられる大義はあったほうがいいなと思えたんです」

ーーとはいえ大義だけでビジネスを成立させるのは難しいですよね。

「だからこそ、自分が勝負できるニッチなところを攻め取りにいこうというのが、僕の基本スタンスになっています」

 

採用基準は、カルチャーに合うかどうか

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ーープロジェクトマネジメントをワークさせるうえで、どのような点を意識して採用を行っているのでしょうか?

「変化を恐れず、物事を考え抜ける人材かどうかに重きを置いています。もちろんデジタル領域の業務経験はあったほうが良いですが、スキルのみを重視した採用はしていません。個人の変化よりも社会の変化のほうが圧倒的に早い。それだけに価値観を固定化せず、進化する目的をもって変化できるかが重要だと思っています。ただこれは、履歴書や面接で完璧にわかるわけではないので、入社してからお互いに話しながら、会社に合っているか合ってないかを定期的に確認しています。

その取り組みのひとつが、週に一度、メンバーの自由参加で行う『GPKOC』という振り返りミーティングです。Good(今週のよかったこと)・ Problem(今週の問題点)・Knowledge(全体に共有されるべき、今後方法論になりそうな気づき)・Other(他人/他者の行動で気づいたこと)・COPILOT Good(他の社員の行動でよかったこと)の頭文字をとっていて、常に事業の目的や本質を考え続けられるようになるための訓練を方法論化したものです。この仕組みを導入したのは、ある時期に僕が上場企業にフルタイムで出向することになって、リモートでコパイロツトの社長業をやることになったのがきっかけでした」

ーー社長がリモートワークとは、ずいぶん思い切ったご判断ですね。

「社長なんていなくていいと思っていたので、『社長が社内にいない実験やろうよ』みたいなノリでした(笑)※。とはいえ、実際にクラウド社長になってみると週に一度しか出社できませんでしたし、たった一回のミーティングでメンバーとチームの現状を把握するためには、効果的にコミュニケーションを取る必要がでてきて。メンバーから案を募って半年ほど検証した中で一番しっくりきたのがGPKOCでした。プロジェクトの現状把握でスタートしたミーティングではありますが、メンバー同士が批評し合ったり、意見をぶつけ合ったりして信頼関係を構築していくことで、チームのパフォーマンスが最大化できると思っています。
(※定金さんを「社長」と呼ぶメンバーは一人もいないとのこと。)

ーーリモートワークの当事者として働いた経験が、実現可能な範囲でより効率的な働き方を考えるきっかけになったのですね。

「あとは個人目標の社内共有も大切にしています。コパイロツトは会社として案件ごとに2〜3人ぐらいのチームを作って運営しています。だからこそ、一緒に働くメンバーの人となりや志向性をわかっていたほうが絶対にいい。やりたい仕事をするほうが、モチベーションは上がるじゃないですか。最初から自分と組織の目的が完全に一致する人なんていない。自分自身で自分のキャリアや志向をもち、会社の方針と比較して自分のありたい姿へ近づけるか検証する。そして、社内メンバーに自分のありたい姿を宣言し共有したうえで、チームに参加する。この両軸を常に比較することが、コパイロツトの価値観を理解してもらう近道だと思っています」

産休・育休後の職場復帰のハードルが依然として高い日本企業。厚生労働省の統計によると、第一子の出産を機に退職する女性は60%以上にものぼるといわれています。インタビューの最後に、コパイロツトではなぜ産休、育休後の復帰が容易なのかを訊ねてみると、「自発的に考えて変化に対応できる人材、産休を取っても帰ってきてほしいと思う人を採用しているからです。半年や1年ほど不在にしたからといって働けないなんてことはない」と定金さん。そうあっけらかんと話すベースには、個人の自由を最大限尊重するという定金さんの信条があるのかもしれません。

定金さんの自由を重んじる気風は、自分が夢中になれるものを見つけ、没頭してきた少年時代の経験によって形作られているようでした。当然のことながら周囲に共感してくれる人は少なかったといいますが、「みんながそれぞれ自由に好きなことをすればいい」と思うきっかけになったのだそうです。

個人のライフスタイルが尊重され、自由な働き方を選ぶことができる。そんな社会の実現を目指して、定金さんとコパイロツトのクルーたちは、会社の操縦桿を握っています。

 

株式会社コパイロツト