生活が苦しいから共働きにしようか検討している、共働きが大変だからどちらかは退職して共働きを解消しようと考えているなど、さまざまな立場の方がいるのではないでしょうか。他の夫婦はどのようになっているのか気になりますよね。今回は、共働きで稼ぎたい理想の年収から実際の平均額までご紹介します。
共働きで稼ぐならこの年収!
近年、共働きで生活を豊かにしよう、そう思い、子育てに一段落した専業主婦が働きに出る場合が多くなってきています。以前は女性の労働力率のM字カーブが問題になっていましたが、現在では出産後も仕事を継続する女性も増えてきており、このM字カーブは緩やかになってきているといわれています。
共働きで得られると理想的な年収額は?
明治安田生命(明治安田生命保険相互会社)が、対象者を0歳から6歳の子供を持つ夫婦にして2019年5月にアンケートを実施した結果、理想の年収を夫773万円、妻259万円となりました。対して現実の年収は夫626万円、妻129万円と、妻である女性側の理想と現実に開きが出ていることが分かります。
参照:https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2019/pdf/20191015_01.pdf
現実と理想の年収を合計すると、それぞれ750万円、1000万円を少し超える形になりますが、理想は900万円を目指すべきと言えます。その理由を見ていきましょう。
共働きの年収をこの金額にするべき理由
なぜ、900万円くらいの世帯年収が理想なのでしょうか。それは、税金などの制度が関係してきます。給与額やボーナスなどについてその都度所得税などが天引き徴収されていますが、これは、年収が大きくなればなるほど割合が高くなります(累進課税制度といいます)。
年収が900万円前後の所得税の税率は以下の通りです。
695万円を超え 900万円以下:23%
900万円を超え 1,800万円以下:33%
引用:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
この金額は所得金額ですので、実際の額面上の給与所得ではありません。所得金額として計算されたものになります。そのため、900万円からではありません。会社に勤務している場合は、いわゆるサラリーマン必要経費として、一定の控除をしてから計算されます。
参考までに、
平成29年分~令和元年分
6,600,000円超 10,000,000円以下:収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超:2,200,000円(上限)
令和2年分以降
6,600,000円超 8,500,000円以下:収入金額×10%+1,100,000円
8,500,000円超:1,950,000円(上限)
引用元:https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/1410.htm
といって、そもそも1000万円と超えると控除される金額が割合ではなくなってしまうため、場合によっては、33%が適用されてしまうことになるのです。10%も割合が高くなってしまうため、たとえ100万円の開きがあったとしても、手取りベースではあまり旨味を感じられなくなってしまうのです。
さらに、1000万円は損という理由は、各種手当の所得制限に引っかかってしまうという点です。子供が2人以上いる家庭の場合、960万円以上の年収で児童手当が満額の1万5000円から5000円の支給に減らされてしまいます。各自治体によって異なりますが、子ども医療費については、世帯年収で補助が受けられないなど設定している場合が多くなっているのです。
さらに、高校無償化については、世帯年収で1000万円以上の場合は、対象外となっています。幼稚園の場合に支給される金額や保育園の保育料など、世帯年収がベースになっています。世間一般にいわれる1000万円以上は損という理由はこのような点にあるのです。所得税に関しては、世帯ではなく各人ごとに計算されるため、同じ額を稼ぐ場合、共働きの方が有利となります。
こうしたことから、共働きの場合大体900万円くらいを理想としているのです。
共働きの年収をこの金額にすると、毎日、毎月の支出はどう構成するべき?
支出に関しては、基本的な割合があります。具体的に、どのような予算を組んでいけばよいのでしょうか。参考になる指標として、国の統計をみていきましょう。総務省の「家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)」の「表Ⅱ-2-1 年間収入五分位階級別家計収支(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)-2017年-」によりますと、年収帯で区分けされており、だいたい「第Ⅲ階級」が年収600万円から700万円、「第Ⅳ階級」が年収800万円から900万円、「第Ⅴ階級」が年収1000万円以上に該当します。この数値は世帯年収に当たります。
- 年収600万円から700万円
このあたりが該当する第Ⅲ階級は、毎月の実収入が約50万円、消費全体は約29万円、黒字率は約29%になっています。代表的な支出項目を見ていきますと、食費が約7万円、住居費約1万6000円、光熱水道費約2万1000円などになっています。
- 年収800万円から900万円
このあたりが該当する第Ⅳ階級は、毎月の実収入が約60万円、消費全体は約35万円、黒字率は約28%になっています。代表的な支出項目を見ていきますと、食費が約8万円、住居費約1万7000円、光熱水道費約2万2000円などになっています。
- 年収1000万円以上
この年収以上が該当する第Ⅴ階級は、毎月の実収入が約86万円、消費全体は約44万円、黒字率は約34.2%になっています。代表的な支出項目を見ていきますと、食費が約9万円、住居費約2万2000円、光熱水道費約2万3000円などになっています。
この統計をみると、住居費がかなり安いと感じるのではないでしょうか。住居費は家賃などに該当します。住宅ローンを返し終わっている、持ち家があるという傾向になっているのです。持ち家がない、賃貸の場合は、収入の約3割までという目安があります。
黒字率は、残って貯金や投資に回せるお金になります。年収600万円以上の世帯においては、約30%ほど貯金ができているということが表れているのです。もちろん平均ですから、住宅ローンを返済している、借家で家賃を支払う場合などはここまで貯金できないので、そこまでできていなくても、やりくりが下手だとは思わないでください。
参考:https://www.stat.go.jp/data/kakei/2017np/gaikyo/pdf/gk02.pdf
共働きのメリット、デメリット
多くの世帯では、共働きをする理由として、少しでも家計を楽にしたいからと挙げる人も多いのです。そこで、共働きのメリットとデメリットをみていきましょう。
メリット
メリットとしては、収入が増えるということです。たとえ扶養の範囲内で月に約8万円でも、年間では約96万円になります。すべてを貯金することができれば、10年で約1000万円を達成できます。子どもへの教育資金に充てることができますし、経済的な余裕も生まれます。レジャーや趣味に充てることによって、日々の生活を豊かにすることもできるでしょう。さらに、厚生年金に加入することなどにより、年金額を将来的に増やすことができます。
また、1人だけの収入ではないため、万が一夫婦のどちらかが病気で働けなくなった場合、収入が0になるリスクが回避できます。そして、会社の社会保険に加入することにより、出産や育児の手当や休業補償給付などを受けられる可能性も出てきます。専業主婦に比べて、経済的な余裕が生まれるというメリットがあります。
デメリット
他方、デメリットとしては、想定よりもお金が貯まらないということが挙げられます。働く場合、昼食などを外食する機会も増えます。毎日の通勤に着ていく服を購入しなければなりません。惣菜を購入するなど家事にお金をかけなければまわらない場合も増えてきます。そして、育児や家事との両立でストレスが生じる場合があります。
このように、共働きはメリットだけではなくデメリットもあるのです。
共働きの平均年収
さて、現在共働きの平均年収はどのくらいなのでしょうか。総務省の「家計調査年報(家計収支編)2018年(平成30年)」によりますと、共働き世帯(二人以上の世帯)の実収入の平均は、1月平均558,718円で、年収にすると、約670万円になっています。
参考:https://www.stat.go.jp/data/kakei/2018np/gaikyo/pdf/gk01.pdf
まとめ
共働きは、メリット・デメリットの両方があります。そして、メリット・デメリットのどちらを優先するかは個々の夫婦や家族状況などにおいても異なってきますので、どちらがベストであるかは断定できないという現状があるのです。
共働きは時間のやりくりや体力面などでかなり大変ですが、その分経済的余裕が生まれます。共働きを解消すると収入が減り、家計のやりくりが大変になりますが、その分家族との時間を増やすことができます。
収入が少なくてもよいから家族との時間も、という方はパート・アルバイトなどの短時間労働を選択する共働きもあるのです。選び方は夫婦それぞれです。ベストだと思う選択をすることをおすすめします。