全世界で新型コロナウイルスの感染拡大が続き、日本でも4月7日に緊急事態宣言が発令されてから早くも1ヶ月が経とうとしています。休校やテレワーク導入で激変する生活、皆さんはどう適応していますか?仕事も、勉強も、趣味も、そして勿論育児も全てお家の中。
今までは外と中ではっきり区別できた仕事と私生活が、全て「家」という1つの空間にまとめられた「おうち時間」ですが、数ヶ月以上の長期化も見通される中、身体も心もヘルシーに保ち続ける工夫が求められています。
Clarity、世界3都市を繋げてZoomイベント開催
Clarityチームは4月16日(木)「ピンチはチャンス!NY流!外出自粛のサバイバルガイド!〜NYロックダウン32日後のリアル〜」をテーマにニューヨーク市、シンシナティ市(米国オハイオ州)、東京の3都市を繋げてオンラインイベントを開催。
世界最多の感染者数が出ているニューヨーク。1ヶ月にも及ぶロックダウンの中、持ち前のポジティブさでエネルギッシュに活動している松井綾香さんが、外出自粛生活をヘルシーに過ごす秘訣をシェアしてくれました。この記事では、ゲストのユニークなトークに加えて、9.11時にNYに駐在していた方、ニューヨークで在宅で働きながら4人のお子さんを育てるママさん、日本で在宅で働くママさんなど参加者の皆さんの、各バックグラウンドやライフステージ別の体験談も併せてご紹介していきます。
スピーカー紹介:松井 綾香さん(AYDEA創業者)
松井 綾香 AYDEA創業者
東京生まれ。14歳で渡米、ボストン大学にて国際関係学・経営学を専攻。上海で外交政策における研究者として参画した後、楽天本社にてEコマースのコンサルタントとして従事。2014年にシリコンバレーに渡り、グローバル企業の日本進出と日系企業の米国進出におけるブランド戦略・マーケティングに携わる。2018年に独立し、ニューヨークにてAYDEAを設立。https://www.aydea.co/
週7日イベントはしご生活が「史上初のNY証券取引所、全オンライン化」に至るまで
ロックダウンの噂により、NYから脱出する人続出
before コロナは月曜日から日曜日まで、毎晩のように起業家や投資家の人逹とネットワーキングイベントをはしごする生活をしていたという綾香さん。出張やプロジェクトが次々とキャンセルされていき仕事面に変化が現れ出す中、3月12日に「ロックダウンになるかもしれない」という噂が流れ、街の雰囲気が一変したと言います。
綾香さん「その晩から私の周りの友達が揃って『ニューヨークは危険だ』『ニューヨークから離れろ』という雰囲気になり、中心部から避難するか、現在の拠点に残るか、結構、究極な選択を迫られました。」
「感染したくない」というより「絶対に感染できない」
綾香さんの身近な人でも知っているだけで15人が感染しているそうですが、ニューヨークは既に陽性と判明しても病床の不足から、待機中に亡くなる人が増加傾向にある段階に来ているのと、医療費がとても高いので、もはや「何があっても感染できない」状況。
綾香さん「同じアメリカでも、リモートワークへの切り替えがスムーズだったIT企業が集まるシリコンバレーと比べ、お堅い業界が根強いニューヨーク。ニューヨーク証券取引所が史上初めてトレーディングフロアを閉鎖して全面的にオンライン化したときは、本当にシンボル的な瞬間でした。そもそも、ニューヨークに拠点を移した理由に、トレンドの発信源としての街で、アートや音楽をはじめとした多彩なバックグラウンドを持つ人たちとの交流がありましたが、それら全てにアクセスできなくなったときに、この街にいる必要があるのかな、なんて考えちゃいました。周りもそんな雰囲気でした。」
ニューヨーカーの適応力と行動力
9.11以来のアメリカ最大の危機状況と言われる中で、変化にいち早く適応し次の行動を始めるニューヨーカー仲間にインスピレーションを受けた、と綾香さんはいいます。
発案から2日でクラファンを開始した起業家友達
綾香さんのニューヨークの起業家友達で、飲食業とケータリングビジネスを始めて3年目のKatさんは、コロナの感染拡大を受けて「今自分が持つ『食べ物を作り、届けるサービス』を一番必要としている人は誰か」と考え、一般客から最前線で働く医療従事者にターゲットを即座にピボットしたと言います。
すぐに自分のネットワークの中から、配達経路など物流関係に強い人へ電話をかけて配達運営を相談。大規模調理が可能なキッチンの確保などサービスを開始する体制を整えた上で、資金を調達するためのクラウドファンディングを立ち上げる、というまでの一連の流れを、思い立ってからたった2日でやってのけたそう。
綾香さん「自分の生活以外でその街に何が起こっているのか。どんな人たちが助けを必要としているのか、自分には何ができるのか。ありとあらゆるリソースとコネクションを駆使して、プロジェクトを始めるニューヨーカーの行動力と柔軟なコラボレーションには驚かされたし、とても刺激を受けました。」
休校1週間でWhatsApp(無料チャットアプリ)を通してママパパのボランティアティーチング・アシストグループが結成される
一方、同じくニューヨークに暮らしていて、在宅で働きながら幼稚園から中学生まで4人のお子さんを育てる参加者のAさんは、そうしたニューヨーカーの行動力とコミュニティの「コネクテッド」な文化は学校教育の面でも現れたと言います。
休校開始後の1週間目はオンライン体制を整えるために授業がなくなったのと同時に、無料チャットアプリのWhatsAppを通して親同士が連携 して、週明けには手が空いている親御さんのボランティアによる授業が始まったそうです。「できる人ができることをやる」協力体制が整っていたニューヨークの、学校と家庭が一体となった教育のシフト変換の素早さに、日本で子育てをしているママさん逹からは羨望の声が出ました。
参加者Aさん「州によってプリントのところもありますが、うちはもう小学校も中学校もGoogle Classroom(教師と生徒のプラットフォーム)を通して毎朝8時に先生がその日の課題を、参考資料や説明のYouTubeと併せて出してくれます。 算数とリーディングとライティングとホームルームも、全てGoogle Meets(ビデオ会議ツール)で開催しています。慣れるまでに時間はかかりましたが、ホームルームの時間から提出物の期限まで、全てGoogleのクラウドにまとめられていて、カレンダー機能にも反映されるため子供1人ひとりのスケジュールが全て把握できているので、慣れればとても便利です。」
都会あるある「自分、バリバリ活動してます!」アピール文化からの解放
ニューヨークと東京の人の共通点としてあるのが、都会ならではの「自分、バリバリ忙しく活動してます!」とアピールする資本主義的な文化。外出自粛で自由時間が増えた都会人にとって、今は自分と向き合える大切な時間、と綾香さんは言います。
週7日イベントはしご生活がなくなって
綾香さん自身も含め、beforeコロナで毎晩のようにネットワーキングをしていた人たちに共通していた変化、それはロックダウンで「常に生産的でソーシャルな生活を送らなくてはいけない」というストレスから解放された、ということ。
綾香さん「イベントがそもそもないから、例えばピアノを弾いても塗り絵をしても、別に何をしていても構わないんだっていう、『思うままに好きなことをしても罪悪感やFOMO(Fear of missing out)を感じない』っていうのが凄い解放感。結構みんな口揃えて、最近自由になった感じするよねって。 ニューヨークも東京も『自分、バリバリ活動してます!』って皆が皆アピールする文化があるけれど、このコロナの外出自粛がそれが実はあんまりヘルシーじゃないってことに気付き始めるきっかけになったのではないでしょうか。」
自分のメンタルバランスを把握するツールを持とう
それでも、激しい環境の変化にストレスや焦りばかり募って目の前に手がつかない、なんて方も多いのではないでしょうか。しかし、ビジネスも政治も今後の予測が全くつかない今だからこそ、将来への心配ではなく、自分のメンタルバランスをコントロールすることにエネルギーを注いであげて、と綾香さんは続けます。
綾香さん「人生、『上手くいった!」と思ったら今度は別の課題が降ってくる。 アップダウンが激しい生活に適応する上で大切なのは『自分のメンタルバランスを取れているか把握する』ことです。 この把握の仕方はヨガだったり読書だったり人によって様々だけど、私の場合だとピアノ弾いていると自分の今のメンタルバランスが音で伝わってくる。そういう日々の習慣に出てくるシグナルはバランスが取れているか、いないかを表しているから、無視せずに『ちょっと今日は本読んでみよう』とか『お風呂に入ろうかな』とか微調整をしてあげることがで毎日バランスを保つことができる。可能なら、自分にとっての微調整「ツール」をなるべく多くしてあげると、その時のメンタルバランスに応じて最適な方法を取ることができます。『あ、これは今集中できないな。じゃあ代わりに、30分間運動してみよう』といった感じで。」
綾香さん「それこそお子さんがいる方だったら、自分も子供もストレスを発散したいから一緒にできるアクティビティ、例えばヨガやお絵かきなど、そういうのを一つ選んで一緒にやってみる、というのもよく聞きます。」
「できること」のコラボレーションが連鎖して、コミュニティが守られる
綾香さんはイベントの最後に、ニューヨークの力強い人々に学ぶ「自分ができることから行動する」ことの大切さについて語ってくれました。
自分は今何がやりたくて、何ができるのか
国民性なのか、はたまた土地柄なのか、ニューヨーカーを見てみると「私にも何かできるかもしれない」という自信を持って行動に移す人が多いそう。そんな彼ら最大の強みは、一人で頑張るのではなく、自分の強みと弱みを把握して、ヘルプを求めたり、他の誰かと頼り合ったりできること。
綾香さん「『これだったら私にもできるから、あの友達に連絡して一緒に何ができるか考えてみようかな』っていうコラボレーションが連鎖していって、 『自分を守る』ことが結果として『コミュニティーを守る』ことになっていくのだと、気がつきました。」
クライアントと協力して、靴下から切り替えて製造したマスクをNYの医療従事者に届ける
そして綾香さんも、家にいながらも深刻化した社会的課題を改善するためにできることに取り組んでいます。ニューヨークでは特に、ホームレスや急な自宅待機から深刻化したDV(家庭内暴力)で困っている人たちが多く、安全な環境で自粛できること自体が本当に恵まれていることだと気づかされたそう。そこで綾香さんは、片っ端からニューヨークにあるシェルター施設に連絡をとり、何が一番必要なのかをヒアリングしました。すると、家庭内暴力に苦しむ女性たちがなにも身の回りのものも持たずに、シェルターに避難してくるという実態を耳にします。
そこで、日本にクライアントを持つ綾香さんは、現在ファッションブランド靴下屋でおなじみのタビオと協力して、靴下をDV被害者のために寄付したり、靴下の製造をマスクの製造に切り替え、ニューヨークの医療従事者に届けるコーディネーションを始めたそうです。
綾香さん「これも私ひとりだけじゃできないけど、『ちょっとこういうの、できませんか?』っていうクライアントへの提案・相談から始まって、サプライチェーンをやっているスタートアップ創業者とか、マスク供給に携わっている方を人づてで繋いでもらって、今一緒に協力しあいながらやっています。『できるかもしれない』って思ったことを、まず誰かに相談してみて実現性を図るところからで良いので、行動に移してみることが大事だなと実感しました。」
最後にメッセージ
綾香さんはイベントの最後に、コロナで不安を抱える日本の人に向けて、withコロナと向き合う勇気が出る言葉を送ってくれました。
綾香さん「『忙しくしていなきゃいけない』っていう焦りや不安をまず取り除いて、 今自分がやりたいことを、見つめてあげてください。 例えば私は、仮にあと数週間しか生きられないと考えてみて、その限られた数週間で自分は何がしたいかをスケッチブックに書き出してみました。命の危機に晒されている今だからこそ、「自分が人生で本当にやりたいこと」が見えてくる。 自分の願望に素直に向き合あってあげることが、今だけではなく長期的にも自分を守ることに繋がり、さらには大切な人を守ることに繋がっていきます。 これはニューヨークに限らず、日本でも連鎖して起こってくることだと信じています。」
まとめ
・ 自分をケアし、自分を守ること。それができて初めて周りの大切な人を守ることができ、コミュニティに貢献することにつながる。
・そのために、まずは自分なりの「ツール」を通して現在進行形の自分を把握しよう。
・「あなただからできること」がきっとある。人に頼ることを恐れずに、小さなことから行動に移してみよう。
これまで、「ニューヨークの今は、2週間後の東京」という風に、最悪なケースの例として出されることが多かったニューヨーク。しかし、最悪な状況でも自分を見失わずに、自分のため、家族のため、そしてコミュニティのために、自分ができることから行動に移していくニューヨーカーの人々の力強さからは、まだまだ私たちも学べるところがいっぱいありそうです。
非日常が続く中、変化に適応しつつ加えて自分をケアしてあげることは簡単なことではありません。しかし、等身大の自分を理解してあげた上で自分をコントロールできる力は、withコロナの今も、コロナが落ち着いたその先も、人生の困難を乗り越える力になってくれる、そんな学びがあったイベントでした。
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